
国籍はどうなってるの?
住民登録と国籍の違い
海外に長く住んでいると、今国籍はどうなっているの?と日本在住の方によく聞かれます。
海外に旅行では行ったことがあっても、住んだことのない人は、住民登録(=住民票がある)と国籍を混同しているようです。国籍はそんなに簡単に変更できるものではありません。

わたしは、日本国籍です。オーストラリアに住む大半の人は日本国籍を保持したまま、オーストラリアの永住権を取り、こちらで暮らしています。
オーストラリアの永住権所持者と市民権(国籍)所持者の違いは、選挙権が永住権者にはないということだけです。他に差別される要素はありません。
日本では2重国籍が認められていないため、日本人が他の国の国籍を取ると、日本の国籍を手放さなければいけなくなります。例えば、オーストラリア国籍を取ると、オーストラリア人になり、日本には観光で訪れることになります。結果、日本にビザなしでは長期で住むことができなくなります。
ただし、子どもは2重国籍、3重国籍も認められています。22歳を超えるまでに国籍を選択する必要があります。日本国籍を選択した場合は、ほかの国籍は放棄しなければならないと、日本では決まっています。
日本に帰って住む予定のない人は、日本国籍をあきらめて、オーストラリア国籍を取得する人もいますが、数は多くありません。やはり、日本に両親や家族がいる場合は、日本国籍を捨てるのはなかなか難しい決断ですね。
ここでは、簡単に変更できる住民登録について説明します。
住民票を日本に置いたまま出国するとどうなる?

日本国内で、引っ越しをする場合は、自分の住んでいる地域の市役所に行き、転出届を出します。
その際に、転出先の新住所も記入して提出します。引っ越しした最寄りの市町村で、転入届を転出証明書と共に提出して転入完了になります。
オーストラリアでは住民票というシステムはないので、転入届を出すところはありません。そのため日本で転出届を提出する際は、オーストラリア連邦と書き、新住所まで書く必要はありません。転出するだけで完了です。
帰国して転入届を提出するまで、日本一時滞在しても、日本に住民登録はされていません。住民登録なしに、日本に滞在することは可能ですが、そのま日本に住み続ける場合は、住民登録は、入国した日が転入日になります。
これは、パスポートの入国スタンプが必要になりますので、空港で入国の際、忘れずにもらってください。入国した日から国民年金や国民健康保険の支払い義務が生じます。
さて、『本題の住民登録をそのままにしておくとどうなるか?』に話に入ります。
この転出届を出さないと、特に代わりなく、日本に住んでいるのと同じ扱いになります。そのため住民税、年金、健康保険などの支払い義務が生じてきます。
市役所で海外転出の手続きをすると、国民年金、国民健康保険の支払い義務はなくなくなるため、長期的に海外滞在される場合は、転出手続きをしている方が多いです。
住民税

住民税は、その年の1月2日以降に海外に転出する(した)という内容で住民票の異動の手続きをした場合は、その年度は前年の1月から12月までに得た所得に対して課税されます。
住民税は、その年の1月1日に住民登録をしていた市区町村が課税することとなっており、住民票を異動しないまま出国した場合も、同様に課税されます。
海外への転出に伴い、住民票の異動の手続きを行い、その年の1月1日に住民登録が無かった場合は、前年に収入があっても、その年度は課税されません。
ただし、その年の1月1日に住民登録が無い場合でも、海外在住期間が1年未満の場合には、原則として国内に住所がある「居住者」として扱われ、1月1日現在海外に居住していても、住民税が課税されることになっています。
留学で1年以内なら、住民票はそのままでもいいかもしれません。その年の収入が多い人は、翌年の1月1日までに出国し、なおかつ1年以上海外にいると、住民票は払わなくてよいということになります。
専業主婦の場合や住民税非課税の方は、住民税をあまり気にする必要はないと思います。
では、住民税以外の点ででメリット、デメリットを見ていきましょう
住民票を入れたまま海外に行く場合
メリット

市役所に届ける時間が節約できる
出国前の忙しい時期にわざわざ市役所に出向いて、様々な手続きをするのは大変です。その時間が節約できます。
海外療養費として医療費が一部返金される
海外療養費という形で、海外渡航中に急な病気などでやむを得ず現地で治療を受けた場合、加入する健保組合などの保険者に申請手続きを行うことにより、海外で支払った医療費の一部の払い戻しを受けることができます。全国保険協会https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3120/r138/
国民健康保険に加入している方は、海外旅行中や海外赴任中に、急な病気やけがなどによりやむを得ず現地の医療機関で診療等を受けた場合、申請により一部医療費の払い戻しを受けられます。
子どもの手当などが継続して支給される
就学児では、学校関係の書類が転出扱いになるので、市町村によっては支払いが止まる可能性はあります。
日本に一時帰国中でも、病院や歯医者に3割負担でかかれる
マイナンバーはキープできる
オーストラリアで銀行口座を解説する時に、提示が必要な銀行があります。2年ほど前に来たワーホリ君はANZ Bankではマイナンバーが必要だったと言っていました。
詳細はわかりませんが、日本の銀行とオーストラリアの銀行をリンクしているのかもしれません。
デメリット

健康保険の支払いがある・年金支払いがある
日本に残るパートナー(ご主人/奥さん)がいる場合は、わざわざ会社に申し出て、社会保険から家族を抜いてもらう必要はないと思います。
年金は専業主婦(主夫)の支払いはありません。健康保険は給料から天引きされているので、支払いはありますが、日本で収入を得てる人の扶養家族になるので、残っている家族の税制的なメリットがあります。
問題は、家族全員で渡航する場合、シングルマザーなどの片親の場合です。日本にいる誰かに国民健康保険、国民年金の支払いをお願いするか、口座引き落としの手続きが必要になります。
なお、固定資産税は住民票に関係なく支払う義務があります。
日本の選挙の際に海外から在外投票ができない
日本に住んでいることになているので、もちろん海外からは投票できません。
重要書類が住民票登録の住所に届く
日本に住んでいることが前提なので、健康保険証やその他の大事な書類が、住民登録の住所に届きます。ほかの家族が住んでいれば問題ありませんが、空き家の場合は、困ることがたくさんあります。
住民票を抜いて海外に行く場合
メリット

国民健康保険を払わなくてよい
国民年金支払い義務がなくなる
任意支払いですので、払わなくても、支払い期間にカウントされます。支払ってない期間分は年金受給の際、減額になります。帰国後、必要であれば無利子で10年分さかのぼって支払いはできます。
在外選挙権がもらえる
オーストラリアの領事館手続きができます。登録まで2か月ほど時間がかかるので、登録して2か月は投票できません。ただし、手続きが完了していれば、日本に帰国した時に、住民票を入れればすぐに選挙で投票できるそうです。選挙人名簿の登録際は、「その時点で3ヶ月以上住んでいる人」が登録されます。手続きしていなければ新たに住民登録した市町村では3か月は選挙権がないことになります。これは、選挙のためにわざわざ引越し、投票をするということを防ぐために決められているルールです。
デメリット

出国前に手続きに市役所に行かなければならない
マイナンバーがなくなり、印鑑証明は登録削除される(戸籍はそのまま)
マイナンバーは海外にいる間はストップされまますが、日本に戻って住民登録すれば同じ番号をそのまま使うことになります。
健康保険が無くなるので、海外療養費はでない
留学の場合は、OSHC(Overseas Student Health Cover)に強制加入やほかの海外旅行保険などに入っているとおもいます。保険があれば、医療費はある程度カバーされるので、療養費がなくても問題ないと思います。
一時帰国で病院や歯医者にかかると無保険のため10割負担
これは、かなり深刻です。3割負担になれている歯医者は特に高く感じます。
海外で、歯医者は基本全額自費です。日本に一時帰国して虫歯を治そうと思っても、健康保険がなければ日本でも全額自費負担になります。
日本で歯医者や病院にかかりたい時 住民登録をすれば日本に到着した日付から、健康保険が使えるようになります。一時帰国などで日本滞在期間が短い時は、市役所で住民登録を断られることがあります。
日本に長期で滞在予定だと言えば、可能なようですが、短期で日本と海外を行ったり来たりしている海外在住者は、地域によっては住民票を入れてくれないところもあるとききます。
その時は、歯科治療を含め、医療費は10割負担になります。
自治体によって、決まりが異なっているようです。ご自分の管轄の自治体に確認してください。
子どもの学校の手続き

当時は、私達は主人の扶養家族に入っていましたので、住民登録もそのままで、オーストラリアにいきました。
親子留学の時は、長女が小学校2年生、次女は未就園児。小学校には、『海外に留学します!』と言って、転校届をだしました。私たちの住んでいる地域では特に何も問題はなかったです。
1年後、帰国してからは、学校に転入届だけを出して再び同じ学校に通うことができました。
本格的にオーストラリアに移住する時は、住民票は抜いて、【海外に転出】の届け出をしました。
まとめ

書類上扶養家族になっている場合は、住民票は日本に残しておいても個人的には良いのではないかと思います。
それ以外の場合は、基本的に住民票を抜くメリットの方が多いように感じます。
しかし、海外滞在期間や個々の経済状況によって左右されることもあるので、デメリット、メリットをよく確かめて判断してください。
